ユニが俺のバイト先で働きはじめて一週間が経過した。心なしか客数が増えてるような・・・あと、売り上げが伸びてるような・・・主に女性客が増えてるな。ユニは幼女から老女までを虜にしている。彼氏連れの派手めなお姉さんも、友達と一緒の地味目なお嬢さんも、ユニの笑顔にやられてるとしか思えない。これだからスターってやつは・・・!
「ご一緒にコーヒーはいかがですか?今なら20円引きになりますよ」
「それじゃあコーヒーもお願いしようかな」
流れるようなセールストーク。ユニが勧めて断る客はいない。それが強面のおっさんであってもだ。女性だけじゃなく、おっさんまでも魅了するのか・・・恐るべしスターの魅力。
「いやぁ・・・ユニ君のおかげで廃棄が減ったよ。」
「少しでも売り上げに貢献できてるなら、嬉しいです」
「少しどころじゃないよ。本当大助かりだよー」
なんか、仕事の後にもらえる弁当が、ちょっとリッチなかんじになった。俺の時はいっつも安物だったのに、これもスターの実力ってやつなのか・・・くぅ・・・所詮この世は顔なのか!
「なんていうか、やっぱプロは違うな。よくあんな笑顔持続できると思うよ」
「まぁ、紛いなりにもスターだからな。この程度は造作もない」
「それに、ユニが来てから常連客が増えた気がする」
「ファンありきの商売だろ。この業界は」
「っていうか、今日も電話でお前を指名してきた女の人がいたな」
「あぁ、俺の声でイきたいから。何かしゃべってくれとさ。息遣いが気持ち悪かったからすぐに切った」
「うわぁ・・・さすがに引くわ。っていうか、変なのに目を付けられて、刺されたリしないだろうな」
「これでも一応兵役経験者だぞ?素人相手にどうこうなるわけがないだろ」
そうだった・・・ユニってばあの地獄の兵役を生き残ってきたっていう設定だった。鍛え上げられた肉体は飾りではなく、実戦向きの筋肉だった。顔良し、スタイル良し、華やかな経歴・・・無敵じゃねぇかよ!
「みーつけたぁ・・・」
突然目の前にゴスロリファッションの女の子が現れた。とりあえず俺の知り合いでないことは確かだ。だって俺こんな黄色とピンクと水色の髪の毛した派手な化粧の女の子の知り合いとかいないもん。
「ふふふ。あなたが持ってる万年筆・・・ぜーんぶちょうだい♪」
「うわぁ・・・中学生の次はゴスロリお嬢さんとか・・・正直しんどいわ」
今俺の手元にあるのは涯・ユニ・憐の三本だ。朧はレプリカだから、この際カウントしないことにする。七本中三本あるってけっこうな割合じゃねぇか?約半分は俺の手元にあるんだぜ?
「・・・あいつ女じゃないぞ」
「え・・・マジでか」
「あいつからは女の匂いがしない。もっというと、思春期の男子高生特有の匂いがする」
「お前は犬か」
ゴスロリお嬢さんじゃなくて、ゴスロリ女装男子か。うわぁ・・・こんな可愛い顔なのに中身男なのか。生えてるのか、俺と同じ物がこの顔の下に・・・引くわ。
「心は乙女だもーん。」
「そういうのやめろ。鳥肌しか立たないわ」
「ひどーい。ミカショック」
本名なのかなんなのか分からんけど、自分のこと名前で呼ぶのどうかと思うぜ・・・どんなに可愛くても中身が野郎だと思うと、萎えるわ。不自然に声高いけど、これどうなってるんだろ?地声?
「そんな酷いこと言うお兄さんは~・・・お仕置きしちゃうね★」
どういう原理なのか、スカートの中からガトリングガン出てきたぞ。おい待てそいつをどうする・・・おぎゃああああ?!撃ってきたぁぁぁぁ?!ユニが咄嗟に俺を庇って塀の影に飛び込んでなかったら蜂の巣だったぜ
「空間閉鎖しろ!」
「あいあいー?!」
ゴスロリ女装男子と、俺達を囲む用に壁を出現させ、さらに俺とユニの周囲にも壁を展開させる。
「あははははは!逃げろ逃げろ~♪」
「なんつぅもん持ち出してるんだよ・・・」
「今ので分かったが、あいつが万年筆のようだな。おそらく主人たる人間は別の場所にいるんだろう」
防御用の壁にガトリングガンの弾が当たりまくるが、俺達のところまでは来ない。
「あのおっさんみたいに、どっかから俺らの様子を見てるってことか?」
「恐らくな。」
「っていうか、アレをどうにかしないと俺ら家に戻れないじゃん」
「そうだな」
「なんとかしてくれよ。拳銃使いだろ?」
「空間閉鎖能力のせいでこっちの弾丸も向こうには届かないぞ。やるならあの弾丸の嵐の中に飛び込まないと」
「無理だろ。ガトリングガンの弾を回避しながら敵に近づくとか、どこの抜刀斎だよ」
「せめて零式を会得してればな」
「そういう問題か?!」
ゴスロリ女装男子は狂った笑い声を上げながらガトリングガンを撃ち込んでくる。まさかこれ無限に撃ち続けられるとかじゃないだろうな?さすがに空間閉鎖能力を使うのにも限界があるぜ・・・
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