「他に人間がいないか探しに行こうか。救助を待ってる人がいるかもしれない」
梨奈はそう言って立ち上がった。
「そうだな。こうして地下に黙ってるわけにもいかないよな」
「とりあえず必要になりそうな物を持って行こう。」
二人は持てるだけの物をまとめて持つと、地上への出口へと向かった。
「そういえばお前は地上の方を見たんだったな・・・酷いのか?」
「あぁ、かなり酷い状況だ。俺達が生きてたのも、運が良かったからなんじゃないかと思う」
「そう・・か」
地上に出てみると、修司が言っていたように、周囲は瓦礫の山になっていた。辛うじて人が通れるぐらいの道が見えるが、建物はほとんど壊れている。どこから来たのか分からないような物も混ざっているが、ほとんどが基地の中にあったものらしい。
「・・・ひどいな」
「あぁ。」
「私はどこにいたんだ?」
「寮のあった方だ。瓦礫と瓦礫の間に倒れてた。」
「他には誰もいなかったのか?」
「俺が見た限りじゃ梨奈だけだ。」
「・・・そうか」
「最初見た時は死んでるのかと思って焦ったけど、生きてて良かった・・・」
「そういえば手当てもしてくれたんだな・・・礼が遅れた。ありがとう」
「改めて言われると照れるな。まぁ、大した怪我じゃなかったから簡単な治療で済んだけどさ」
「そうか」
「・・・にしても、これだけ歩いて一人も見当たらないのはおかしいよな。」
「そうだな。」
「瓦礫の下に埋まってたらお手上げだけどな・・・」
「犬でも使わないとそんな場所までは分からないだろう。」
「犬並みの嗅覚でもあればなー」
「・・・ん?」
「どうした?」
「人の身体のようなものが見えた・・・気がしたんだが」
梨奈が指差した先には迷彩柄のズボンの一部が見えている。
「ちょっと見てくる」
「俺が行くから待ってて・・・」
「私も行く」
「いや・・・」
「一人でどうにかできなかったら困るだろ」
「・・・」
修司が前に立って迷彩柄のズボンが見えている場所に近づいた。迷彩柄の上半身は瓦礫の隙間に挟まっている上体だったが、なんとか潰されずに済んでいる。
「誰かいるのか?」
瓦礫の隙間から若い男の声がしてきた。
「誰でもいいから足を引っ張ってくれないか?」
「引っ張ってもいいものなのか?」
梨奈が瓦礫の隙間から中の様子を伺った。
「頼むよ・・・自力じゃ出られないんだ。」
「引っ張るぞ」
「優しく頼むよ」
修司は男の足をつかむと力いっぱい引っ張った。男は予想よりも簡単に瓦礫の隙間から現れた。褐色の肌に短い髪の毛と大きめな目が特徴の男だった。
「ありがとなー・・・って、日野と立花?!」
「葛城だってのは声で分かったけどな」
修司は呆れた顔で葛城を見た。
「っていうか、なんなんだよこの状況は・・・」
「俺達にも分からない」
「お前ら以外は?」
「発見できたのは葛城だけだ」
「なぁ・・・もしかしてこれ夢・・・ひぃっだだだだっ」
梨奈が葛城の頬を思いっきりつねった。
「これで夢じゃないって分かっただろ」
「そういうのは自分の顔でやるもんじゃねーの?」
「お前が夢じゃないかというから、お前の顔でやった」
「相変わらず容赦無いな・・・」
「俺もここに来る前にやられたけどな」
「これが夢じゃねーってなると・・・これからどうするか考えないとな?」
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