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爆心地

小心者の小心者による小心者のためのブログ

始まりは唐突に。  

「あなたは眉間に皺を寄せて生まれて来たのよ。生まれるかどうか悩んでたみたいに」
母は俺にこんなことを言っていたが、俺が思うに生まれたての赤子なんてみんな顔をしわくちゃにしてるものだ。俺だけが生まれるかどうか悩んでたわけでもないだろう。だが、最近になって俺は何のために生きているのかわからなくなってきた。理由を持って生まれてくる奴がいないなら、死ぬのにも理由なんていらないんだろう。でも、死にたくないから生きてる。「お前は何故生きている?」と問われたら、俺は迷うことなくこういうだろう「生きてる理由は無くても、ここで死ぬ理由もないから」
俺の名前は祥太郎。32歳独身。年齢=彼女いない暦の、売れない小説家だ。住んでるのは6畳の部屋に台所が付いてるだけの安アパート。トイレは共同。風呂は無い。小説を書いてない時はコンビニのバイトだとか、配達の仕事だとかをやってる。どこにでもいる平凡な人間・・・それが俺だ。
 その日はバイトの帰りで、暗い夜道を一人で歩いていた。下を見ながら歩いていたのが悪かったのか、前方から来た人間に体当たりされた。
「うわっ・・・」
俺は持っていた荷物(もらったコンビニ弁当)を落としてしまった。ぶつかってきた方はというと、何かから逃げている様子で何も言わずに走り去った。
「一言ぐらい謝れっつーの・・・」
なんとか中身は無事だった荷物を拾っていると、足元に何か転がっているのが見えた。さっきの人が落としたらしいが、本人はすでに影も形も無い。仕方なく拾うと、それは古ぼけた万年筆であることが分かった。
「これは警察に届けるべき・・・?」
俺はどうしたもんかと思いながら、とりあえず家に帰った。玄関の鍵を開け、誰もいない真っ暗な部屋に入る。電気とテレビを付け、パソコンを起動する。拾った万年筆を電気の下でよく観察してみた。暗い場所では黒く見えていたが、こうして明るい場所で見ると臙脂色をしている。試しにそこら辺にあったメモに文字を書いてみた。インクの色はぱっと見には黒だが、じっくり見ると限りなく黒に近い青だということが分かる。
「交番には明日もって行けばいいか」
俺は万年筆を机の引き出しに仕舞い、銭湯へ向かった。時間が遅かったせいもあるが、銭湯にはあまり人がいなかった。身体を洗っていると、横に人が来た。こんなに空いてるのに、なんでわざわざ俺の横なんだと思っていると、突然腕をつかまれた。
「なんですか急に」
「君・・・何か拾っただろ」
金髪碧眼の、どこから見てもモデル体型のその男は、俺の顔を見ながらそんなことを言ってきた。
「何かって・・・何」
万年筆を拾った時には、近くには誰もいなかったはずだ。
「手に入れた力の使い方を間違えば・・・分かるね?」
「はぁ?」
男は至極真面目な顔で、意味の分からないセリフを言ってきた。そもそも俺は力なんて手に入れた覚えが無い。今日拾ったのは何の変哲もないただの万年筆だし、それ以外で何かあったわけでもない。コンビニで手に入れた弁当は力とは言えないだろうし、やっぱり男の言葉の意味が分からない。
「あ。それと、シャンプー貸して。」
先ほどの真剣な表情は消え、人懐っこそうな笑顔と共に手を出してきた。俺はさっきのセリフの意味も聞けないまま、黙ってシャンプーのボトルを男に渡した。結局その後は会話らしい会話も無いまま俺は銭湯を出て、家に帰った。
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Posted on 2012/08/30 Thu. 10:14 [edit]

category: 55号室の住人

tb: 0   cm: 2

コメント

すごく続きが気になる。
続きはまだですか~?

URL | パンとぶどう酒 #-
2012/08/30 11:18 | edit

Re: タイトルなし

そう言っていただけると嬉しいです
頑張って続きを書きますね!

URL | 小心者またはチキン #-
2012/08/30 22:47 | edit

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