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小心者の小心者による小心者のためのブログ

*12話*  

女性の部屋の隣に藤原が引っ越してきた翌日。マンションのエントランスで女性が郵便箱の中をチェックしているところに、藤原が通りかかった。
「こんな時間に何してるんだ?配達はまだだろう?」
突然背後から声をかけられたせいでまた悲鳴が出そうになる。
「あなたこそなにをしてるんですか・・・」
「朝のジョギングに行こうと思ってな。」
藤原の方はというと、どこかの学校の指定ジャージのようなエメラルドグリーンのジャージを着ている。
「雨降ってますけど?」
女性が言うように、外の道路は濡れている。
「雨で濡れるのも、汗で濡れるのも大差ないだろう。」
「風邪引きますよ?」
「俺は生まれてから今まで風邪を引いたことがない。」
藤原はどこか自慢げに言うと、雨の降っている外へと出て行った。女性は呆れた顔でそれを見てから、郵便箱の中身を素早く回収して部屋に戻った。部屋に入って持っていた封筒を見詰める。宛名も差出人の名前も無いが、それが誰からの物かというのは分かっている。中身を確認せずそのままゴミ箱へと捨てて、溜息を付く。一方その頃、藤原はマンションの近くにあるコンビニに来ていた。雑誌コーナーからちょうどマンションの入り口が見える。雑誌を立ち読みするふりをしながらさりげなく入り口の方の様子を伺っている。少し経つと女性が出てきた。どうやら出勤時刻になったらしく、会社の制服を着ている。藤原はそれを見送ると、持っていた雑誌を買ってコンビニを出た。そのままマンションに戻り、自分の部屋ではなく、女性の部屋のドアの前に立つ。ポケットから出てきたのはファンシーなキーホルダーの付いた鍵で、藤原は当然のようにそれでドアを開けると中に入った。広めの玄関には一足も靴が無く。靴箱の上には花瓶が置かれていて、造花が飾られている。玄関を過ぎると短い廊下があって右側にトイレのドアがあり、左側にはちょっとした物置がある。さらに奥には寝室のドアとバスルームのドアがあって、突き当たりに居間へのドアがある。藤原は迷わず居間へと向かい、ゴミ箱の中に捨てられている封筒を拾った。封は切らずに、表面に手を当てて目を閉じる。数秒そのまま動かなかったが、目を開けるのと同時に封筒をゴミ箱の中に捨てた。最初に捨てられていた時と全く同じ場所に落ちる。
「・・・暇な人間もいるもんだな」
封筒の中にはどこから撮影されたのか分からないが、女性の写真が何枚も入っていた。
「でも、おかげで手がかりはつかめたな。」
藤原は入った時と同じように堂々と部屋を出ると鍵を閉め、ファンシーなキーホルダーの付いた鍵をポケットにしまった。
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Posted on 2014/08/20 Wed. 01:24 [edit]

category: 彼岸花

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