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小心者の小心者による小心者のためのブログ

本物にはなれない  

いくら似せたところで造花は造花でしかない。
目が覚めると錦が寝ていたはずのベッドに見慣れない人物が座っていた。短い黒髪と白すぎる肌が印象的な20代前半ぐらいの男で、なぜかこちらを睨んでいる。
「・・・やっと起きましたか。」
「錦は・・・?」
いろいろと聞きたいことはあったが、とりあえず錦がどうなったのかが気になったので聞いてみた。
「この部屋にいたもう一人の方なら、違う部屋に連れて行かれましたよ」
「違う部屋?」
「ここの他にも似たような部屋がいくつかあるんです。どこも同じような状況ですけどね」
「あんたは?」
「別の部屋から移ってきたんですよ。」
「ここのこと詳しいのか?」
「ここに来てから長いですからね。」
「長いって・・・」
「ここに連れてこられた時にはまだ未成年でしたけど、今じゃ成人してますしね。」
自分と同じ境遇の人が他にも大勢いたことには驚いた。
「そういえば名前を言ってませんでしたね。ケイっていいます」
「俺ははじめっていう。」
「その様子だとこの部屋以外のことは分からないかんじですか」
「こんなふざけた状況なのは自分とここに一緒にいた錦ぐらいだと思ってたから」
「僕も最初はそう思ってました。部屋を移される時までは」
「なぜ部屋を移されたんだ?」
「ピンク頭の人の気まぐれでしょうね」
「ピンク頭?」
「僕らをここに連れてきた人ですよ。」
「俺が知ってるのは金髪の男だったが・・・」
「名前が分からないから僕の言ってる人物とはじめ君の言う人物が同一人物なのか、確かめようがありませんね」
「複数いるのか、それとも同じヤツがヅラでも被ってるのか・・・」
「まぁ、どちらでも大した問題ではありませんけどね」
「呼んでもないのに部屋に来るから、顔見れば分かるだろ」
「呼んでもないってのはひどいね」
いつのまにかドアのところに金髪男が来ていた。
「そっちの君とははじめまして・・・かな?」
どうやらケイの言っていたピンク頭とこの金髪男は別人のようだ。
「・・・」
「たしか名前は啓君だったよね?モモから聞いたんだけど。」
「・・・」
「モモが言ってたんだけど、君しゃべれないの?」
「・・・」
ケイは金髪男と目を合わせようともしないし、質問にも一切答えない。俺と話していたから話せないということはないのだろうが、こいつとは話したくないという意味なのだろうと思ったから俺は黙っていた。
「僕とは話したくない・・・ってところかな?」
「・・・」
ケイは露骨に嫌な顔をしている。具体的に言うと噛み付く寸前の犬みたいな顔だ。
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Posted on 2014/11/16 Sun. 23:45 [edit]

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